云わず野原

馴れていく − 「云わず野原」






賑やかな場所をえらびます
できればいい匂いのする
美味しい料理があるところ
ぼくたちはもう話すことがないから

けれども賑やかな場所をえらびます
それが野原に椅子をおいたとしても
きっとおんなじことなんだけど
もうたくさんは話さないほうがいいから

隣りの人たちが難しい話ばかりしていて
その隣りでは誰かが冗談をやってる
どっと笑いが盛り上がるね、そうだよ
若い頃なら話せることがいくらでもあった

口で云えることでは、なにも
云えなくなってしまったり
考えてできることも少なくなって
いつからか
手放せないものばかり
抱えすぎたぼくたちの距離からは

黙ったほうがいい、という会話しか
聞こえないようになったけれど

だから賑やかな場所をえらびます
ウェイターが皿をさげながら
もう一杯如何と訊ねて
有難う、もう結構と答えるのだとしても













[2009/11/23 19:53] | 未分類 | page top
幽霊


可哀相な娘
娘の暮らした家の軒先
日没前と没後との曖昧な
蛙の声と川音との結び間
枝垂れ柳の枝垂れた辺りに

娘の姿とよく似たものが
俯いて立って居ります
時折、村を訪れる旅人だけが
その娘に似たものを見やり慄いては
幽霊、と呼び囁いたりはするのですが

それは娘がというわけでなく
娘の受けた仕打ちがというのでなく
畳の細目に摺り付いた土と
拭き取った痕の様なもの
床下の行李に隠されていた端書き
その行方の様なもの
村の連中、子供達までもが
微笑みを湛え乍ら決して

口にはしない、暮らしと喉の奥底へ
飲み込まれたものが行き場なく
ああして集まり、寄ってたかり
薄ぼんやり
形をなして居るのでしょう














[2009/11/16 19:58] | 未分類 | page top
いつもいつまでも


いつもいつもこのままではといつも
いつまでたってもいつまでも
こんな調子でこのままで
いけないのだぞとわかっているくせ
ついついついついこんな具合で
いつまでたってもいつまでも

いったいいつになったらといつも
しかられそしられけとばされてはいつも
あげくしらんぷりされてはいつも、いつも
あたまをさげたりなみだぐんだり

いよいよいいかげんまずいのだからと
いつまでも
このままでいるとおもうなと
いつになく
いちねんほっきのいちだいけっしん
したのがたしか一昨年の
いつだったのやらいつでもよいが

いつでもこんなを繰り返すうち
いつになったら、と云ってるうちにまさか
云ってるだけの暮らしがよもや
意外と気に入ってしまったわけではあるまいなと

あげく、いつのまにかこんな唄まで
できてしまったわけではあるまいなあー、と
くちずさんではいつまでたっても
ついついつつついこんな調子で、具合で、じぶんで
いつまでたってもいつまでも














[2009/11/09 19:54] | 未分類 | page top
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