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馴れていく − 「云わず野原」 賑やかな場所をえらびます できればいい匂いのする 美味しい料理があるところ ぼくたちはもう話すことがないから けれども賑やかな場所をえらびます それが野原に椅子をおいたとしても きっとおんなじことなんだけど もうたくさんは話さないほうがいいから 隣りの人たちが難しい話ばかりしていて その隣りでは誰かが冗談をやってる どっと笑いが盛り上がるね、そうだよ 若い頃なら話せることがいくらでもあった 口で云えることでは、なにも 云えなくなってしまったり 考えてできることも少なくなって いつからか 手放せないものばかり 抱えすぎたぼくたちの距離からは 黙ったほうがいい、という会話しか 聞こえないようになったけれど だから賑やかな場所をえらびます ウェイターが皿をさげながら もう一杯如何と訊ねて 有難う、もう結構と答えるのだとしても |
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可哀相な娘 娘の暮らした家の軒先 日没前と没後との曖昧な 蛙の声と川音との結び間 枝垂れ柳の枝垂れた辺りに 娘の姿とよく似たものが 俯いて立って居ります 時折、村を訪れる旅人だけが その娘に似たものを見やり慄いては 幽霊、と呼び囁いたりはするのですが それは娘がというわけでなく 娘の受けた仕打ちがというのでなく 畳の細目に摺り付いた土と 拭き取った痕の様なもの 床下の行李に隠されていた端書き その行方の様なもの 村の連中、子供達までもが 微笑みを湛え乍ら決して 口にはしない、暮らしと喉の奥底へ 飲み込まれたものが行き場なく ああして集まり、寄ってたかり 薄ぼんやり 形をなして居るのでしょう |
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いつもいつもこのままではといつも いつまでたってもいつまでも こんな調子でこのままで いけないのだぞとわかっているくせ ついついついついこんな具合で いつまでたってもいつまでも いったいいつになったらといつも しかられそしられけとばされてはいつも あげくしらんぷりされてはいつも、いつも あたまをさげたりなみだぐんだり いよいよいいかげんまずいのだからと いつまでも このままでいるとおもうなと いつになく いちねんほっきのいちだいけっしん したのがたしか一昨年の いつだったのやらいつでもよいが いつでもこんなを繰り返すうち いつになったら、と云ってるうちにまさか 云ってるだけの暮らしがよもや 意外と気に入ってしまったわけではあるまいなと あげく、いつのまにかこんな唄まで できてしまったわけではあるまいなあー、と くちずさんではいつまでたっても ついついつつついこんな調子で、具合で、じぶんで いつまでたってもいつまでも |





